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大阪高等裁判所 平成2年(ネ)1079号 判決

控訴人 佐藤繁次

被控訴人 佐藤陽子

主文

原判決を取り消す。

控訴人と被控訴人とを離婚する。

控訴人と被控訴人との間の長男優一、二男秀二の親権者を控訴人と定める。

訴訟費用は一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

主文と同旨

二  事実関係及び認定事実は、次のとおり訂正、付加するほかは原判決の「事実及び理由」欄記載(原判決1枚目裏7行目冒頭から5枚目裏10行目末尾まで)のとおりであるから、これをここに引用する。

原判決2枚目表10行目の「甲1、2、乙1、6」を「甲1ないし4、乙1、6、8」に訂正し、3枚目表3行目の「被告は、」の次に「昭和57年10月頃までは」を付加し、同9行目の「位碑」を「位牌」に訂正し、4枚目表8行目末尾に「なお、右2人の子供は控訴人方に居住し、控訴人及びその母ツルがその後現在に至るまで右2人の子供を継続して養育している。」を付加し、同末行の「もつており」を「持つていたことがあり」に、5枚目表9行目の「焼香はしなかつた。」を「焼香も骨拾いもしなかつた。また、被控訴人は、その姉妹らと共に被控訴人の両親の祭られた仏壇や位牌を焼き払つている。」に、同12行目の「態度を見るにつけて」を「態度や行動を見たり聞いたりするにつけて」に、同裏2行目の「増悪の念」を「不信と増悪の念」に、同4行目の「ほとんど交渉がない。」を「全く交渉がない状態であり、控訴人の離婚の意思は固い。」に、同7行目の「子供達」から10行目末尾までを「再び控訴人及び2人の子供と同居して生活したい希望を持つており、自分の信仰する宗教の崇拝行為に関係ない限り控訴人及びその母の言うことに従いたい意向を示している。しかし、被控訴人は、控訴人がいかに嫌悪しようとも自己の宗教活動を止める意思は毛頭ないし、また、離婚の意思もない。」に訂正する。

三  当裁判所の判断

前記二の認定事実によれば、被控訴人には自己の宗教活動を控訴人との関係を円満にするために自粛しようとの気持ちは全くないこと、仮に控訴人と被控訴人とが同居を再開したとしても、被控訴人が現に行つている宗教活動の状況からすれば日常の家事や子供の養育に相当の支障が出てくるのは必至であり、控訴人がこれを容認することは全く期待できないこと、控訴人の被控訴人に対する不信と増悪の念が強く離婚の意思が固いこと、被控訴人は離婚の意思がなく控訴人の言うことにも従いたいというが、別居期間はすでに8年に及んでおり(もつとも、当初の2、3年は両者間に若干の交渉があつたが)現実に夫婦関係が円満に回復するという見込みは全くないことが明らかであり、控訴人と被控訴人との間の婚姻関係は既に完全に破綻しているものと認めるのが相当である。

ところで、信仰の自由は夫婦といえども互いに尊重しなければならないことはいうまでもないが、しかし、信仰の自由といつても、夫婦として共同生活を営む以上自ずから節度があるべきものであり、相手方の意見や立場を尊重して夫婦及び家族間の関係が円満に行くように努力し、行き過ぎは慎むべきものである。これを本件についてみるのに、前記認定事実によれば、被控訴人の行動は、いささか限度を越えるところがあり夫婦間の協力扶助義務に反しているといわざるを得ない。控訴人にも被控訴人の信仰の自由を尊重する寛容さが足りない面がないとはいえないが、被控訴人の行動と対比すれば、婚姻関係破綻につき控訴人を主たる有責配偶者であるとみることはできない。

以上によれば、控訴人の本件離婚請求は、民法770条1項5号所定の事由に該当するので、これを認容すべきものである。

そして、前記認定事実によれば、控訴人と被控訴人との間の2人の子供の親権者は、いずれも父である控訴人と定めるのが相当である。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 渡辺貢 中田昭孝)

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